【参加者募集中】公開研究会: 有機農産物の安全性と化学性・機能性成分~海外の研究動向と最新の科学を学ぶ~

2025年05月21日

日本有機農業学会 公開研究会 
有機農産物の安全性と化学性・機能性成分 ~海外の研究動向と最新の科学を学ぶ~

有機農業には、消費者へ安全で健康的な食べ物を提供するという役割が期待されています。ところが近年、日本では有機農業の推進理由として環境保全機能のみが強調される傾向にあり、安全面や健康効果における有機農産物の優位性について科学的に検証しようとする試みが減ってきています。そのような中、有機農産物の安全性や健康効果をめぐっては科学的根拠を欠く肯定的意見から極端に懐疑的な見方まで様々な言説が飛び交っている状況です。

一方、海外では先進諸国を中心に2000年以降、有機農産物の安全性や栄養化学、機能性成分、健康効果について科学的に、客観的に評価・解明しようという大型研究プロジェクトが推進されてきました。その結果、2009年にはEU公式文書で「有機食品は高い品質と安全性を有する」と明記されるに至り、2010年前後の時期から科学的に高い信頼性を持つと思われる研究が多数報告されてきています。

日本の有機農業はとりわけ安全・安心な農産物の提供を主たる社会的使命として発展してきました。その歴史的経緯を踏まえると、日本においても有機農産物の安全性や化学性、機能性成分等に関する科学的知見を収集・整理し、日本の生産者や消費者に分かりやすく情報提供していくことには大きな意義があるといえます。

そこで日本有機農業学会では2024年7月より有機食品の安全性や化学性、機能性成分等に関する海外の研究成果の情報の収集・整理を兼ねた勉強会を開催してきました。この度、当該勉強会で得られた知見を広く一般の方々と共有するべく、公開研究会を企画しました。

同時に、有機農産物の評価において重要な役割を持つと思われる食品分析・食品化学の分野で活躍されている研究者を招いて、当該分野の日本国内の研究についての知見も紹介して頂く予定です。有機農業に限らず、農産物の化学成分や機能性成分、健康科学的価値、食品化学等に関心のある幅広い層の方々のご参加をお待ちしております。

開催日時:8月5日(火)13:00~15:40(オンライン開催)
主催:日本有機農業学会
参加費:無料
対象:研究者・学生・一般(非会員の方も参加できます)

定員:95 300名先着順)*当初のご案内より定員を増やしました
参加申込み:次のリンクより必要事項をご記入の上、お申込みください。https://peatix.com/event/4415757

※12月5~7日に開催する第26回日本有機農業学会大会においても関連テーマでのセッションを開催する予定です。

<プログラム>

農産物に含まれる化学成分の多様性は食品としての品質を決定する重要な因子です。特に農作物(植物)の代謝物はバリエーションが多く、さらに栽培環境の影響を受けて多彩に変化することから分析化学の分野においても重要なトピックスです。本会では、2演題(第一報告:NMR/MRI、第二報告:CE-MS/LC-MS)にわたって、高度機器分析による農産物・食品成分の分析例と各手法の特徴、および最新動向などを紹介します。

*13:00~ 開会あいさつ
*第一報告(13:10~):国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 高度分析研究センター

上級研究員 関山恭代

演題:高度機器分析の農業研究への展開と有機農産物分析の可能性(1)

内容:第一報告では、農研機構の関山恭代氏により、核磁気共鳴(NMR)法による農産物成分の一斉分析(メタボロミクス)や磁気共鳴画像法(MRI)による農産物・食品の分析について紹介いただきます。NMRメタボロミクスでは、農産物や食品の化学成分を分離せずに混合物の状態で分析することができます。含まれる成分の種類や量のバランスは指紋の様にそれぞれのサンプルの個性となります。MRIでは水や油の分布や動きを可視化することができ、やはり環境や貯蔵条件、加工条件を反映したサンプルの個性となります。本会ではこれらの分析事例を紹介するとともに、農業試料を分析する際に配慮すべきことなどを考えることで、今後に向けた議論の呼び水になればと思います。

*第二報告(13:40~):京都大学農学研究科 教授 及川 彰

演題:高度機器分析の農業研究への展開と有機農産物分析の可能性(2)
高度機器分析の農業研究への展開と有機農産物分析の可能性(1)

内容:及川彰氏は、生体内に含まれる全ての代謝物を網羅的に解析するメタボロミクスを農産物や食品の分析に展開してきました。これらの質量分析法は、現在行われている機器分析の中で最も高感度・高分解能な手法であり、先端技術の最新動向をご紹介いただきます。また、高感度であるがゆえに、サンプル間の僅かな変化を検出できる一方で、結果の解釈には注意が必要あり、試験設計や何を比較するのかが非常に重要となります。分析例とともに、及川氏が多くの農業試料を扱ってきたご経験から感じた課題も共有し、第一報告と合わせて、今後に向けた関係者間での議論のヒントになることを期待します。

*休憩(14:30~14:40)

*第三報告(14:40~):国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター

上級研究員 池田成志

演題:有機農産物の機能性成分等に係る海外の研究情勢

内容:海外では、有機農産物の化学性や機能性成分について科学的に解明しようという試みが進んできており、近年は信頼性の高い研究が数多く発表されてきています。安全・安心な農産物(食品)の提供をその主たる社会的使命として発展してきたという日本の有機農業の経緯を踏まえても、有機農産物の安全性や化学性に関する科学的知識を更新していくことには大きな意義があるといえます。そこで、有機農産物の安全性や化学性、機能性成分等に関する海外の研究成果について文献調査を進めてきた池田成志氏より、それらの情報を一般の方々に向けて紹介いただきます。

*質疑応答(15:10~)

*総括・閉会挨拶(15:30~)